【育児ウツ】心のなかの「鬼」と妻への手紙 #03

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「オメエとなんて、二度と遊ばねえよ!」

「オレ、お前キライ!」

3歳になる息子に、絶対言ってはいけない言葉。それらをいつからか投げつけるようになっていた。

「ふざけんな、このガキ!」

ことあるごとに子どもの頭をはたくようになっていた。

3年半にも及ぶ不妊治療の末に授かった子どもだったのに。数カ月前までは本当にかわいく思えてたのに。今では憎くて仕方ない。憎くて仕方ないと、さらりと思える自分が怖い。

僕は完全に“育児ウツ”になった。出口はいまのところ、まだない。

▼部屋をノックする息子

多忙を極め、にもかかわらずまったく上手くいかない仕事。そのうえ兼業主夫のためすべての家事をこなし、育児も。人はそれを「ワンオペ」と呼ぶのだろうけど、当時の自分にそんな意識もなかった。「負担」は感じたが、それをやって「当たり前」だろうという、どこか強迫観念じみたものがあった。全部やって当たり前だろうと。

そのうえ、子どもは猛烈なイヤイヤ期。何をやっても言っても否定され、会話にならない。ようやく一緒に遊び初めても、今度は強烈なマイルールを押し付けてくる。「なんでボールをそっちに投げるの!」「パパが先に走って!」と、わけのわからないことで怒ってくる、そのストレス。仕事・家事・育児、そのすべてに押し潰され、俺は部屋にこもるようになった。

なぜすべてが上手くいかないのだろう。打開策を講じる余裕などない。そうなると人は、身近なものを恨むことを選択する。俺の場合、それは妻と子どもだった。ふたりが憎い。子どもの顔も妻の顔も見たくない。

なにより、また息子にひどい言葉をぶつけてしまうのではないか、頭を叩いてしまうのではないか、それが怖かった。

ぶったりひどい言葉をぶつけると、心が痛む。潰れるほど痛む。だから彼らの存在を消せばいいんだと、自室にこもるようになった。

寝るのも自室。夕メシも別。リビングでの団らんに参加することもやめた。

 

それでも息子は、俺の部屋をノックしてきた。

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「コンコン」

 

それを俺は無視する。すると扉の向こうから、こんな声が聞こえてきた。

 

「ぱぱ、ごめんなしゃい!」

「ぱぱ、ごめんなしゃい!」

 

パパにひっぱたかれたのは僕が悪いからだ。パパに「キライ」といわれたのは、僕が悪いからだ。扉の向こうで、ひたすらに許しを乞う3歳の息子。その純粋無垢な姿に、身を引き裂かれる。自分はなんてひどい親なんだと。それに耐えられなかった。

 

「うるせえ、カス! あっち行ってろ!!」

 

思わずまた汚い言葉が口を出る。もうダメだ。溢れる涙を拭くこともなく、再び自室のソファにうずくまった。それからしばらくしてトイレに行こうと自室を出ると、そこに息子がいて一瞬目が合った。

するとヤツは全身をビクッ! とさせると、ママの後ろに隠れた。完全に俺に怯えている。そう、壊れるのなんて一瞬だ。昨日はジャブジャブ池だ、今日はトイザらスだ、週末となりゃ遊園地だ水族館だと僕を楽しいところに連れまわしてくれたパパは、もういない。

いるのは体がでかくて怖い、ただの鬼だ。壊すのなんて一瞬だ。

 

▼心のなかの鬼

この頃になると自分がどうしたいのかさえも、よくわからなかった。元に戻りたいと願っていなかったのも、どうすれば元に戻れるのか、その方法がわからなかったからだ。

ただただ、心のなかの鬼がいなくなってくれ、そう願った。

それでもひと晩経って朝になると、息子は自室に入ってきて「ぱぱ、あそぼう」と甘えてくる。きのうの晩ぶたれたのに、ひどいことを言われたのに、まるですべてを水に流してくれたように、甘えてきてくれる。

まるでやり直すチャンスを与えてくれるように。僕は抱きしめ再び日常を取り戻したかと思いきや、遊んでいくなかで再びヤツのイヤイヤ期が発動し、俺がキレるのループ。

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それでも日常はこなさないといけない。妻はフルタイムで働く会社員だ。息子の保育園の送り迎えだけは、どうしたって在宅就労者の僕の出番となる。

たまに出る自分のカンシャクへの贖罪の意味も込め、それだけは僕が担当した。だがしかしその道中でのイヤイヤ、溜まるストレス。

いま考えれば、そうやって育児ウツを“育てていた”のかもしれない。

 

▼妻への手紙

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もう一度言うが、この頃僕は仕事に殺されかけていた。くわえて家事はすべてやった。外にいると少しは気分もいいので、週末子どもと遊んでいた。

ただ家に帰ると自分のなかの鬼が姿を現すのが怖くて、自室にひたすらこもっていた。はっきりいって異常だ。

送り迎えや、週末一緒に遊んだりするのに、家族で家にいるとなると、ひとりで自室にこもる。こうやって育児ウツをたぶん、育てていたのだ。

気分転換することも考えず、妻に相談することもせず、イライラと自己嫌悪を溜めこむ。そうやって育児ウツはすくすくと育ち、ある日、目を閉じなくても目の前が真っ暗になった。

比喩ではなく、マジで。

 

 

あ、ダメだ。俺、死ぬわ。

 

その晩、初めて妻に手紙を書いた。すべてを捨てます、そんなことを書きつらね、妻に渡した。「さようなら」のつもりだった。

 

【参考・画像】
※ takasu、Yaoinlove、Gajus / Shutterstock

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